GO:移動概念


1. 移動概念 (1): [移動主体] + MOVE + (FROM 起点) + (PATH 中間経路) + (TO 着点)

移動概念は、概略、"[移動主体] + MOVE + (FROM 起点) + (PATH 中間経路) + (TO 着点)"というように図式化できる。もっとも、"起点→中間経路→着点"の情報は必ずしも全て言語的に明示されるわけではなく、MOVEの概念を表す具体的な述語動詞やコミュニケーション上の情報価値に応じて、特定のものだけに注目し、残りの要素は背景化されるという場合が圧倒的に多い。実際の例文で、上の図式の中のどの要素が実際に言語化されているのかを検討していこう。

61. この列車は Norwich発 Peterborough行きです。
→ This train goes from Norwich to Peterborough.

移動主体: this train / MOVE: 述語動詞 go / 起点: from Norwich / 着点: to Peterborough

62. 彼は New Yorkから Chicagoへ引っ越した。
→ He moved from New York to Chicago.

移動主体: He / MOVE: 述語動詞 move / 起点: from New York / 着点: to Chicago
61では移動主体が「モノ (train)」であったのに対し、62では「人」が移動主体であり、意思に基づいた移動が表されている。

63. 学校には朝7時に出かけます。
→ I go to school at seven (o'clock) in the morning.

go:「(話し手の関心が置かれている場所から)行く・離れる」
多くの場合、「話し手の関心が置かれている場所」は話し手のいる場所と一致し、したがって起点の情報は文脈から自明となる。よって情報伝達上、着点 (63では to school)のみが明示されている。

64. 私たちはロンドンから東京に来ました。
→ We came to Tokyo from London.

come:「(話し手の関心が置かれている場所へ)来る・行く」
comeの場合、64のように "come to 着点 from 起点"の語順となるのが普通。逆に goは、"go from 起点 to 着点"となる。これは comeが話し手の関心が置かれている場所へ近づく、goはそこから離れることから、より認知的に近いと捉えられる要素が逆転するためと考えられうる。

65. もう、おいとましなければなりません。
→ I'm afraid I must be leaving now.

leave:「(場所を)去る・離れる」
65では、起点(この場所)も着点(自宅)も明らかであるため、わざわざ言語化される必要がない。また、 must be leavingのように進行形を用いる方が丁寧な語調となる。

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2. 移動概念(2): 着点 (+経路)に注目

移動概念: "[移動主体] + MOVE + (FROM 起点) + (PATH 経路) + (TO 着点)"が実際の英文に反映される様子を引き続き検討していく。通常、移動は何らかの意図・目的を持って行われるものであるため、一般的に「着点」およびそれに至る「経路」に注目が置かれやすい。このことが文法に反映されている様子に注目。

66. 強盗 (burglar)はその窓から侵入して来た。
→ The burglar got in througn the window.

「強盗 (burglar)が(建物・部屋の)内部 (in)に至る状況を得た (got)」という状況がベースにあり、その状況下で注目の置かれる侵入経路に関する状況が through the windowによって導かれている。

67. 私たちはヨーロッパ中をあちこち旅行した。
→ We traveled through Europe.

through:「空間内を通り抜けて」というコアイメージから拡張して、空間的には「〜の至るところに」・時間的には「〜のはじめから終わりまで」を表す。

68. Bakerさんは Oxford経由で帰宅する予定です。
→ Mr Baker will return home via Oxford.

via | ˈvaɪə |:「〜を通って・経由して」バスなどの行き先表示で "via XX"とあれば「XX経由」の路線であるということ。

69. スーパーまで行くところです。
→ I'm (just) going down to the supermarket.

ここでの down「話し手の意識の中心(この場)から離れて」の意味合いで解釈するのが自然。まず漠然と downと言っておいて、具体的な着点を to the supermarketで明示する要領 (cf. 例文 8, 10)

70. ほら、バスが来たよ。
→ Here comes the bus.

70のような状況では、 busを新情報として聞き手に提示したい。よって文頭に新情報の主語は置かず、 Hereで聞き手の注意を喚起し、SとVを倒置 (comes the bus)させて、情報処理上最も焦点が当てられる文末の位置に新情報の主語を持ってくる。

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3. 移動概念の拡張 → 移動の結果や想像上の移動が状態を表す例

今回は「移動概念の拡張」として、移動の結果想像上の移動状態を表す例文を研究していこう。

71. ハーバード大 (Harvard University)の出身です。
→ I went to Harvard University.

わざわざ "I graduated from ~"と持ち出さなくとも、過去形で went to~と言い表すことによって、「過去に(習慣的に)OO学校に行っていた = OO学校の出である」ということを言えるのである。

72. この道はどこに続いているのですか?
→ Where does this road go?

ここでの goは実際の移動を表しているわけではなく、発話者の頭の中で this roadの道のりが辿られているという「想像上の移動 (fictive motion)」に基づいて使われている。

73. 彼の熱は下がった。
→ His temperature has come down.

come: 「(話し手の関心が置かれている場所へ)来る・行く」のイメージより、his temperatureが「平熱の方向へ」下がって今に至るということ。

74. このコートはくるぶし (ankles)まである。
→ This coat comes to my ankles.

74も 72と同様の fictive motionの例。コートを着用した時の、襟や肩から足首までの目線の動きが移動概念に反映されている。さらに「コートの長さ」をいう時には下側の位置が意識の中心となるため、 my anklesの方に視点が置かれ comeが用いられることになる。

75. 兄/弟は来週には帰宅します。
→ My brother will be {home / back} next week.

「移動」が終わった後には、移動主体が着点に「存在」することになるため、移動の結果に注目して be動詞で表すことができる。とりわけ 75では「来週には兄/弟が自宅にいる」ということが主として伝えられるべき内容であるため、移動そのものに注目した comeを使うよりも、結果状態に注目して beで表す方が好ましい。

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4. 移動概念の拡張(2) → 表現のヴァリエィション

「存在概念の拡張」でも説明した通り、英語では【基本概念+様態】を、様態の方に注目して動詞の中に併合して表す形が特徴的に現れる。今回は、"[移動主体] + MOVE + (FROM 起点) + (PATH 中間経路) + (TO 着点)"の構造の中で、移動概念 (MOVE)と様態 (MANNER)が併合されて表現される例を観察していこう。

76. バス通学をしています。
→ I go to school by bus.

バスや電車 (by train)などの交通機関を利用した移動では、移動概念は述語動詞 go・様態(移動手段)は前置詞句 by ~で別々に表されている。77以降の例と比較せよ。

77. 徒歩で通学しています。
→ I walk to school.

よく "I go to school on foot."型で覚えさせられるが、これは by bus/trainなどとの対比を色濃く伝える言い方。交通手段を対比する意図がなく「〜に徒歩で行く」ということを表現する場合は、77のように "walk to 場所"の方が普通の言い方となる。

78. 父は車通勤です。
→ My father drives to work.

77と同様、"~ goes to work by car"よりも自然な言い方。

79. 札幌へは飛行機で行きます。
→ I will fly to Sapporo.

もちろん walkのように「自力で」飛ぶわけではなく、 driveのように「操縦する」わけでもないが、飛行機に乗るときは bus/trainなどと比べて 「飛ぶ」ということが意識に上りやすい。文法には人間の世界の捉え方が多いに反映されているのである。

80. 私たちは駅まで走った。
→ We ran to the station.

「駅まで」の「まで」に頭を悩ます必要はない。"移動主体 + {MOVE+MANNER (run)} + TO 着点"の構造で組み立てる。

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5. 移動概念の拡張 (3) → 移動様態を動詞に併合

日本語では {MOVE+MANNER}は複合動詞になることが多いが、英語では様態を表す語が移動概念に併合され、単独で述語動詞として現れる形が特徴的に見られる。

81. その猫はテーブルに飛び乗った。
→ The cat jumped {on / onto} the table.

"jump on the table"は移動+様態 (jump)の着点 (the table)のみが想定されているのに対し、"jump onto the table"では toの存在により経路が想起される言い方となっている。よって "jump onto ~"の方が、「床からテーブル」など、跳躍距離の長い移動であることを表す。

82. 人々が海岸に沿ってぶらぶら歩いている。
→ People are strolling along the beach.

日英語の文法的特徴の違いが典型的に観察される例。日本語では「ぶらぶら(様態)+歩く(移動)」というように、様態部分を擬態語で表現する複合動詞が多様に存在する(プカプカ浮かぶ・ぐるぐる回る・ぴょんぴょん跳ぶ…など)。このように日本語で擬態語として現れる様態が、英語では多様な動詞によって表されることになる(stroll「ぶらぶら歩く」・ ramble「ぐるぐる歩き回る」・ trudge「のろのろ歩く」…など)。

83. その瓶は坂を転がり落ちた。
→ The bottle rolled down the slope.

{MOVE + MANNER (roll)} → 述語動詞 roll

84. そのボートは勢いよく川を下っていった。
→ The boat floated rapidly down the river.

{MOVE + MANNER (float)} → 述語動詞 float

85. その車はキーと音を立てて急停止した。
→ The car screeched to a halt.

移動が止まる様子 (STOP)を表す文。停止が起こる際に生じた音(様態): screechを動詞に併合し、「着点」となる状態(=急停止: halt)に至ったことを前置詞 toで導く。

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6. 移動概念の拡張 (4) → 前置詞の意味概念が動詞に併合された他動詞

今までは、移動概念を表す "[移動主体] + MOVE + (FROM 起点) + (PATH 中間経路) + (TO 着点)"の構造において、起点・中間経路・着点が副詞 or 前置詞句で表される例を検討してきた。しかし英語の動詞の中には、前置詞に相当する意味概念が動詞の中に編入 (incorporation)され、他動詞として後ろに直接目的語(=名詞句)を伴うものがある。今回はそのような動詞の使い方を学習していこう。

86. 私たちは夜遅くにロンドンに着いた。
→ We reached London late at night.

reach : 意味概念としては GO TO / ARRIVE ATに相当。

87. 彼女は自分の部屋に入った。
→ She entered her room.

enter: 意味概念としては GO INTOに相当。

88. 大きな台風 (typhoon)が日本に接近中です。
→ A big typhoon is approaching Japan.

approach: GO TOWARDに相当し、着点に「近づいていく」ことを表す。

89. Harryは階段を登った。
→ Harry climbed (up) the stairs.

climb: 本義は「手足を使ってよじ登る」こと (= GO UP)

90. 彼女は6月にロンドンから東京に出発します。
→ She is leaving London for Tokyo in June.

leave: 目的語に「移動元」を取る唯一の動詞。意味概念として GO FROMを表す。(cf. 例文 65)

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